※父A名義の不動産について、父Aが死亡した直後に、母Bが死亡したという事例おいて、相続人となる子が一人っ子Cだった場合の登記手続きに関する事例です。
最近は、相続の依頼が多くなっているけど、これはどうなの?っていうことはあったかい?
そういえば、この間、一人で遺産分割協議はできますか?
って相談されたことがありました。
ほう、どんな内容だったんだい?
はい、お父さん名義の不動産があって、①お父さんが亡くなった直後に、②お母さんが亡くなってしまったんだそうです。
息子さんは一人っ子なので、相続人は一人だけで問題はないんですけど、直接息子さん名義に相続登記をするには、お母さんと息子さんとの間で息子さんがその不動産を取得する遺産分割協議が必要ですよね?
だけど、明確に誰が相続するかなんてことを決める前にお母さんが亡くなってしまったみたいで。
なるほど、その事例に関しては、たしか判例があったね。
被相続人Aの遺産について遺産分割未了のまま、他の相続人Bが死亡したから当該遺産全部を直接Cが相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してされた当該遺産に属する不動産に係る相続を原因とする所有権移転登記申請に対し,登記官が登記原因証明情報の提供がないとしてした却下決定が,適法とされた事例。
=東京高裁平成26年9月30日判決=
判例は、相談内容そのままだったね。
お母さんと息子さんが遺産分割協議をしていなかった場合は、息子さん一人で作成した証明書は登記原因証明情報の適格性を欠くから、いったんお母さんと息子さん名義で法定相続分による登記が必要というロジックだね。
だけど、同じような内容で先例もあったね。たしか、『遺産分割の協議後に他の相続人が死亡して、当該協議の証明者が一人となった場合の相続による所有権の移転の登記の可否について』だったかな。
この事例では、お母さんと息子さんの間で遺産分割協議の話し合いは決まっていたのであれば、書面としては残していなかったときでも、息子さん一人で作成した証明書で直接お父さんから息子名義に相続登記申請をして構わないという内容だったね。
被相続人Aの遺産について、相続人BとCとの間でCが単独でAの遺産を取得する旨の遺産の分割の協議が行われた後にBが死亡したときは、遺産の分割の協議は要式行為ではないことから、Bの生前にBとCの間で遺産分割協議書が作成されていなくとも当該協議は有効であり、また、Cは当該協議の内容を証明することができる唯一の相続人であるから、当該協議の内容を明記してCがBの死後に作成した遺産分割協議証明書は、登記原因証明情報としての適格性を有し、これがCの印鑑証明書とともに提供されたときは、相続による所有権の移転の登記の申請に係る登記をすることができる。
=平成28年3月2日法務省民二第154号=
遺産分割協議証明書の記載例も挙げられていたね。
だけど、遺産分割協議をしていたかどうかの証拠はどうするんですかね?
そうだね、ここは依頼者の言葉を信じるしかないね、、
司法書士としては、原則は、①お父さんから、お母さんと息子さんへの法定相続分による相続登記と、②お母さんから、息子さんへの相続登記の2件の申請が必要と考えておいた方がいいかもしれないね。
今は、期間限定ですが、①のお母さん名義にする分に関しては、非課税になる措置がとられているので、申請件数は2件になるけど、登録免許税の負担は直接お父さんから息子さんへ相続登記をした場合と変わりはないですよ。